1-02-加熱溶着型
加熱溶着型
道路橋の新設及び既設の床版(コンクリート床版及び鋼床版)に防水シートを機械で貼り付ける工法(加熱溶着型)で、設置されるシート系防水層(加熱溶着型)の防水工法を対象とする。
機械に取り付けた防水シートを電気ヒーターで加熱して粘着力を高めて接着させるタイプと防水シートの下層のアスファルトをトーチバーナーで溶融接着させるタイプの工法の2種類がある。
材 料
1プライマー
プライマーは、主として、アスファルトや合成ゴム、合成樹脂などを有機溶剤で溶解した溶剤型のもの、アスファルトや合成ゴム、合成樹脂などを水中に乳化分散させた水性型(エマルジョンタイプ)のもの、合成樹脂などの反応硬化型のもので、防水シートとの接着に適し、刷毛などで塗布するのに支障の無いものとする。
鋼床版用のプライマーは、鋼床版の防錆を考慮してアスファルト、合成ゴム、合成樹脂などを有機溶剤で溶解したものが望ましい。
2防水シート
1)加熱溶着型(電気ヒーター用)
加熱溶着型防水シート(電気ヒーター用)は、基材にポリエステル系不織布や、織布、ガラス繊維等を使用し、改質アスファルトを塗覆させた積層構造のシートである。強鞭で耐久性があり、低温可とう性、床版のひび割れに対する追従性にも優れる。アスファルトを主原料にしていることから薬品に対しても抵抗性が高い。
防水シートは1.5〜2.5㎜厚幅1m程度であり、表面に鉱物質粉粒を散布し、裏面は溶融フィルムを接着して長尺ロール状に巻いた、工場で生産・品質管理された製品である。塗覆するアスファルトは舗装材との接着性を考え、アスファルトに合成ゴムや合成樹脂等を添加した改質アスファルトを使用している。溶融フィルムは機械に設置した電気ヒーターで溶融されプライマー面と溶着する。
2)加熱溶着型(トーチバーナー用)
加熱溶着型防水シート(トーチバーナー用)は、基材にポリエステル系不織布や、織布、ガラス繊維等を使用し、改質アスファルトを塗覆させた積層構造のシートである。強鞭で耐久性があり、低温可とう性、床版のひび割れに対する追従性にも優れる。アスファルトを主原料にしていることから薬品に対しても抵抗性が高い。
防水シートは2.0〜3.5㎜厚、幅1m程度であり、表面に鉱物質粉粒を散布し、裏面は溶融フィルム又は鉱物質粉粒を接着してロール状に巻いた、工場で生産・品質管理された製品である。塗覆するアスファルトは舗装材との接着性を考え、アスファルトに合成ゴムや合成樹脂等を添加した改質アスファルトを使用している。防水シートの下層の改質アスファルトと溶融フィルム(又は鉱物質粉粒)はトーチバーナーで溶融されプライマー面と溶着する。
3シート系床版防水材(加熱溶着型)と構成図
加熱溶着型の標準的な防水シートの構成を図-1に示す。

図-1 防水シート(加熱溶着型)の例
4シート系床版防水材(加熱溶着型)の標準的品質と特徴
1)プライマーの標準的品質
表-1 プライマーの標準的品質
種類
項目 |
溶剤型 | 水性型 | 反応硬化型 | 試験方法 | |
---|---|---|---|---|---|
コンクリート 床版用 |
鋼床版用 | ||||
指触乾燥時間 (23℃)分 |
60 以内 | 60 以内 | 180 以内 | 180 以内 | JIS K 5600-1-1*1 |
不揮発分 % |
20 以上 | 50 以上 | 35 以上 | ー | JIS K 6833-1*2 |
作業性 | 塗り作業に支障のないこと | JIS K 5600-1-1*1 | |||
耐水性 | 5日間で異常のないこと | JIS K 5600-6-1*1 |
*1:適用する床版の種類に応じた下地材を使用する。(例:コンクリート床版の場合は、コンクリートブロックまたはモルタルピースとし、鋼床版の場合は鋼板を使用する。)
*2:不揮発分の試験条件は、その他の接着剤による。
2)防水シートの標準的品質
表-2 防水シートの標準的品質
項 目 | 標 準 値 | 試驗方法 | |
---|---|---|---|
厚 さ | mm | 1.0〜3.5 | 「道路橋床版防水便覧」の試験方法による |
引張強さ (長手、 幅方向とも) | N/cm | 100以上 | |
最大荷重時の伸び率 *1(長手、幅方向とも) | % | ー (試験値を記載) | |
低温可とう性 (長手、 幅方向とも) | 5個中4個以上合格 | ||
吸水膨張性(長手、 幅方向とも) | % | 0.0±1.0 | |
加熱収縮率(長手、 幅方向とも) | % | 0.0±3.0 | |
耐アルカリ性 (23℃) | 飽和水酸化カルシウム 水溶液に15日間浸して異常のないこと |
||
耐塩水性 (23℃) | 3%食塩水溶液に15日間浸して異常のないこと |
*1:参考値
3)シート系床版防水層(加熱溶着型)の特徴
表-3 シート系床版防水層(加熱溶着型)の特徴
項 目 | シート系(加熱溶着型・機械貼り) | |
---|---|---|
概要 | 組成 | 基材であるポリエステル系不織布や織布、ガラスメッシュ繊維などに改質アスファルトを塗覆した積層構造の防水シート |
防水層の厚さ | 2.0〜3.5㎜(1.5〜2.5㎜)*2 | |
施工方法 | 施工方法 | 施工機械を用い、電気ヒーター、トーチバー ナーによる施工 |
防水層の性能 | 床版や舗装との接着性 | 良好 |
防水性 | 良好 | |
ひび割れ追従性 | 良好 | |
ブリスタリング発生の可能性 | 普通(比較的低い) *2 | |
舗装時の防水層損傷の可能性 | 少ない | |
防水層の 施工性 |
作業員(人/班) および機械構成 | 5〜7人/班 ブロワー、貼付け機、トーチバーナー |
舗設時日当たり施工規模 | 300〜500㎡程度 (500〜1000㎡) *2 | |
養生時間 | なし | |
条件に対する適用性*1 | 舗装全層打換え時の床版の不陸 | 凹凸が20㎜以上の場合は不陸調整が必要 |
舗装全層打換え時に残留アスファルトが除去しきれない場合 | 残留アスファルト混合物の下地への付着が良好な場合は適用可能、プライマーに含ま れる有機溶剤に注意 | |
打継ぎ目の多い床版 | 適用性が高い | |
舗装厚が薄い場合(4〜5cm) | 影響は少ない | |
歩道部への適用 | メッシュの繊維基材のものは適用可 | |
積雪寒冷地における適用 | 普通 |
*1:主に補修工事を対象とする場合に考慮する項目。電気ヒーターでの施工に適用するが、トーチバーナーでの施工には適用しない。
*2:( )内は電気ヒーター用に適用
表-4 シート系床版防水層(加熱溶着型)の施工方法の特徴
項 目 | 加熱溶着型(機械貼り) | |
---|---|---|
電気ヒーター | トーチバーナー | |
シートの機械装着 最大長さ |
400m程度 | 15m程度 |
施工機械 |
機械にシートを装着し運転しながら貼り付ける。 ![]() |
機械にシートを装着し機械を引きながらシートを貼り付ける。 ![]() |
4)副資材
表-5 シート系床版防水層(加熱溶着型)の副資材
種 類 | 用 途 | |
---|---|---|
プライマー | 溶剂型 水性型 反応硬化型 |
下地処理用プライマー |
端末処理材 | 網状ルーフィング | 防水シート端末処理材 |
貼付用アスファルト | 改質アスファルト アスファルトコンパウンド |
貼付用アスファルト |
工 法
1シート系床版防水層(加熱溶着型)の構成
防水層の構成および端末処理の例を図-2に示す。


図-2 シート系床版防水層(加熱溶着型)の層構成および端末処理の例
2シート系床版防水層(加熱溶着型)の施工フロー
1) 新設
床版面の調整
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留意点 コンクリート床版
鋼床版
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プライマー塗布
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留意点
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シートの貼り付け
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留意点
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端末の処理
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留意点
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防水工完了
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留意点
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舗装工
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留意点
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図-3 シート系床版防水層(加熱溶着型)の施工フロー(新設)
2)舗装全層打換え
床版面の調整
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留意点
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スイーパー清掃
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アスファルト層の除去
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留意点
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以下は、新設に準じる。 |
図-4 シート系床版防水層(加熱溶着型)の施工フロー(舗装全層打換え)
3シート系床版防水層(加熱溶着型)の施工手順
下地の調整・清掃


コンクリート床版下地の清掃
プライマー塗布



プライマーの塗布
シートの貼り付け


機械でのシート貼り付け状況
(電気ヒーター)

機械でのシート貼り付け状況
(トーチバーナー)
端末の処理


シート端末部の処理
(端末処理材による)
防水工完了


防水層の完成
(電気ヒーター)

防水層の完成
(トーチバーナー)