床版アスファルト防水工業会

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道路橋床版防水工法

2-01-アスファルト加熱型

アスファルト加熱型

 道路橋の新設及び既設の床版(コンクリート床版及び鋼床版)に溶融した改質アスファルトを塗布する工法で、設置される塗膜系(アスファルト加熱型)防水層の防水工法を対象とする。

材 料

1プライマー

 プライマーは、主として、アスファルトや合成ゴム、合成樹脂などを有機溶剤で溶解した溶剤型のもの、アスファルトや合成ゴム,合成樹脂などを水中に乳化分散させた水性型(エマルジョンタイプ)のもの、合成樹脂などの反応硬化型のもので、防水シートとの接着に適し、刷毛などで塗布するのに支障の無いものとする。
 鋼床版用のプライマーは、鋼床版の防錆を考慮してアスファルト、合成ゴム、合成樹脂などを有機溶剤で溶解したものが望ましい。

2アスファルト加熱型防水材

アスファルト加熱型防水材はアスファルトに合成ゴムや合成樹脂などを加えたブロック固形物の防水材である。施工方法は、施工現場で専用釜を用いて加熱溶解し、刷毛などで塗布する方法と製造工場で製造後、専用機械で散布する方法がある。いずれの場合でも塗膜厚さは1.0〜1.5㎜の防水層を形成する。施工能率が良いことやブリスタリングの発生が比較的少ないことから補修工事や舗装厚の薄い歩道に適用されることが多い。

3塗膜系床版防水材(アスファルト加熱型)の標準的品質と特徴
1) プライマーの標準的品質

表-1 プライマーの標準的品質

種類

項目

溶剤型 水性型 反応硬化型 試験方法
コンクリート
床版用
鋼床版用
指触乾燥時間
(23℃)分
60 以内 60 以内 180 以内 180 以内 JIS K 5600-1-1*1
不揮発分
%
20 以上 50 以上 35 以上 JIS K 6833-1*2
作業性 塗り作業に支障のないこと JIS K 5600-1-1*1
耐水性 5日間で異常のないこと JIS K 5600-6-1*1

*1:適用する床版の種類に応じた下地材を使用する。(例:コンクリート床版の場合は、コンクリートブロックまたはモルタルピースとし、鋼床版の場合は鋼板を使用する。)
*2:不揮発分の試験条件は、その他の接着剤による。

2)塗膜系床版防水材(アスファルト加熱型)の標準的品質

表-2 塗膜系床版防水材(アスファルト加熱型)の標準的品質

項  目 標 準 値 試驗方法
針入度(円錐針) mm 1〜5 「道路橋床版防水便覧」の試験方法による
軟化点 80 以上
引張強さ(23℃) N/cm 0.35 以上
破断時の伸び率 % 300 以上
耐アルカリ性(23℃) 飽和水酸化カルシウム水溶液に15日間浸して異常のないこと
耐塩水性(23℃) % 3%食塩水に15日間浸して異常のないこと
3)塗膜系床版防水層(アスファルト加熱型)の特徴

表-3 塗膜系床版防水層(アスファルト加熱型)の特徴

項  目 アスファルト加熱型
概要 組成 アスファルトに合成ゴムや合成樹脂を添加したもの
防水層の厚さ 1.0〜1.5㎜
施工方法 施工方法 アスファルト用の刷毛などで塗布。または機械散布
性能と留意点 床版や舗装との接着性 良好
防水性 普通
ひび割れ追従性 普通
ブリスタリング発生の可能性 比較的低い
舗装時の防水層損傷の可能性 舗装合材温度の高いものは注意が必要
施工性 作業員(人/班)、施工機械 4〜6人/班、
作業員(人/班)
舗設時日当たり施工規模 500〜700㎡程度
養生時間 なし
条件に対する適用性 舗装全層打換え時の床版の不陸 良好(凹部での溜りに注意)
条件に対する適用性*1 舗装全層打換え時に残留アスファルトが除去しきれない場合 残留アスファルト混合物の下地への付着が良好な場合は適用可能、溶剤系プライマーの使用時は溶剤に注意
打継ぎ目の多い床版 要検討(補強材を使用する等)
舗装厚が薄い場合(4〜5㎝) 普通
歩道部への適用 適用が高い
積雪寒冷地における適用 普通

*1:主に補修工事を対象とする場合に考慮する項目。

4)副資材

表-4 塗膜系床版防水層(アスファルト加熱型)の副資材

種  類 用  途
プライマー 溶剂型
水性型
反応硬化型
下地処理用プライマー
硅砂 防水材の保護材 ダスト分含有量が少なくて均一な粒径の硅砂
端末処理材 網状ルーフィング 防水シート端末処理材

※:必要に応じて使用する

工 法

1塗膜系床版防水層(アスファルト加熱型)の構成

 防水層の構成および端末処理の例を図-1に示す。

*1:地覆部は、必要に応じ網状ルーフィングで補強する

図-1 塗膜系防水層(アスファルト加熱型)の層構成および端末処理の例

2塗膜系床版防水層(アスファルト加熱型)の施工フロー
1) 新設
床版面の調整

留意点

コンクリート床版

  • 床版仕上げは、金ゴテ、木ゴテ、ホウキ目仕上げとする。
  • レベル鉄筋が床版より突起している場合は、ディスクサンダ等で削る。

鋼床版

  • 錆の発生程度、表面処理方法選択の目安の詳細は、道路橋床版防水便覧を参考とする。
プライマー塗布
  • ブロア、吸引機等で塵埃等を清掃する
  • プライマーをローラー刷毛や塗布機で均一に塗布する
  • 乾燥養生を行う

留意点

  • 表面乾燥状態を目視により確認する。
    (高周波水分計で含水率10%以下を目安とするが参考程度に用いる)
  • 可燃性危険物のプライマーを使用する場合は、現場での貯蔵場所および量に注意し施工中は火気厳禁とする。
  • 施工時の気温は5°C以上を原則とする。
  • 降雨中に作業してはならない。
  • 強風時の施工は材料が飛散する事があるので避ける。
  • プライマーの乾燥を指触等で確認する。
アスファルト加熱型防水材の溶解
  • 溶解温度は、材料メーカの仕様による

留意点

  • アスファルト専用の溶解釜を使用する。
  • 消火器を準備する。
  • 溶解釜の周りは汚さないように養生シートを敷く。
  • 部分加熱をさける。
アスファルト加熱型防水材の塗布
  • 防水材を刷毛または散布機械で均一に塗布する。

留意点

  • 大きな気泡はつぶし、極端な塗布ムラは再塗布する。
硅砂の散布
  • 硅砂を手または機械で均一に散布する。

留意点

  • 極端なムラがないよう散布する。
端末の処理
  • 地覆部および排水ますの周りは端末処理材を用いて基層厚程度に立ち上げる。

留意点

  • 排水ます及び排水口の部分は塵埃・水分量の多い場合があるので清掃・乾燥作業を入念に行う。
防水工完了

留意点

  • 防水層のブリスタリングがないことを確認する。(発生した場合は、千枚通し等で穴を開けて押さえ込む)
舗装工

留意点

  • 基本的にはタックコートは使用しない。
  • 防水層完了後、直ちに舗装が可能である。
  • 舗装のブリスタリング防止のため、防水層施工後1週間以内の舗装が望ましい。

図-2 塗膜系床版防水層(アスファルト加熱型)の施工フロー(新設)

2)舗装全層打換え
床版面の調整

留意点

  • 切削機の水の散布量は最小限に抑える。
  • 切削機の走行を止めた場合(伸縮継手付近等)はすぐに水を止める。
  • コンクリート床版の場合、床版の凹凸が20㎜以上あると補修作業が必要になることから、 既存舗装材の切削時に注意し作業を進めることが望ましい。
  • 清掃は丁寧に行い、砕石等が残らないようにする。
  • 散水は最小限にする。
スイーパ清掃
アスファルト層の除去

留意点

  • 浮いた残存アスファルト層は、たたき試験等を行い、床版との接着状態を確認する。

注)防水材の使用量は、床版の凹凸によって変化するため、新設に比べて使用量は多くなる。

以下は、新設に準じる。

図-3 塗膜系床版防水層(アスファルト加熱型)の施工フロー(舗装全層打換え)

3塗膜系床版防水層(アスファルト加熱型)の施工手順

下地調整・清掃

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床版面の清掃

プライマー塗布

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プライマーの塗布

防水材の溶解

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防水材の加熱溶解

端末の処理

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端末部処理

防水材の塗布
または機械散布

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防水材の塗布

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防水材の機械散布

保護硅砂の散布

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保護硅砂の散布

防水工完了

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アスファルト舗装

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防水層の完成