床版アスファルト防水工業会

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道路橋床版防水工法

1-01-流し貼り型

流し貼り型

 道路橋の新設及び既設の床版(コンクリート床版及び鋼床版)に防水シートを溶融アスファルトで貼り付ける工法(流し貼り型)で、設置されるシート系床版防水層(流し貼り型)の防水工法を対象とする。
 このシート系防水層は,防水の確実性,床版及び舗装との接着性,床版のひび割れに対する追従性などに優れている。

材 料

1プライマー

 プライマーは、主として、アスファルトや合成ゴム、合成樹脂などを有機溶剤で溶解した溶剤型のもの、アスファルトや合成ゴム,合成樹脂などを水中に乳化分散させた水性型(エマルジョンタイプ)のもの、合成樹脂などの反応硬化型のもので、防水シートとの接着に適し、刷毛などで塗布するのに支障の無いものとする。
 鋼床版用のプライマーは、鋼床版の防錆を考慮してアスファルト,合成ゴム,合成樹脂などを有機溶剤で溶解したものが望ましい。
 施工に使用されるプライマーは可燃性危険物(第4類)の溶剤を含むものが多く、使用に際しては注意が必要である。

2防水シート

 流し貼り型防水シートは、基材となるポリエステル系不織布や織布、ガラス繊維等に、改質アスファルトを塗覆させた積層構造である。強靭で耐久性や寸法安定性、低温可とう性、ひび割れに対する追従性などに優れる。また、アスファルトを主原料にしていることから、薬品に対しても高い抵抗性を示す。
 防水シートは1.0〜3.5㎜厚で、幅1m程度のものに鉱物質粉粒を散布してロール状に巻いた製品形態が一般的であり、工場で生産・品質管理された製品である。塗覆するアスファルトは舗装材との接着性を考え、アスファルトに合成ゴムや合成樹脂等を添加した改質アスファルトを使用している。
 貼付用アスファルトには、改質アスファルト、またはアスファルトコンパウンドが用いられ、これを溶融し流しながらシートを貼る。

3シート系床版防水材 (流し貼り型) と構成図

 流し貼り型の標準的な防水シートの構成を図-1に示す。

図-1 防水シート(流し貼り型)の例

4シート系床版防水材(流し貼り型)の標準的品質と特徴
1)プライマーの標準的品質

表-1 プライマーの標準的品質

種類

 

項目

溶剤型 水性型 反応硬化型 試験方法
コンクリート
床版用
鋼床版用
指触乾燥時間
(23℃)分
60 以内 60 以内 180 以内 180 以内 JIS K 5600-1-1*1
不揮発分
%
20 以上 50 以上 35 以上 JIS K 6833-1*2
作業性 塗り作業に支障のないこと JIS K 5600-1-1*1
耐水性 5日間で異常のないこと JIS K 5600-6-1*1

*1:適用する床版の種類に応じた下地材を使用する。(例:コンクリート床版の場合は、コンクリートブロックまたはモルタルピースとし、鋼床版の場合は鋼板を使用する。)
*2:不揮発分の試験条件は、その他の接着剤による。

2)防水シートの標準的品質

表-2 防水シートの標準的品質

項  目 標 準 値 試驗方法
厚  さ mm 1.0〜3.5 「道路橋床版防水便覧」の試験方法による
引張強さ (長手、 幅方向とも) N/cm 100以上
最大荷重時の伸び率 *1(長手、幅方向とも) % ー (試験値を記載)
低温可とう性 (長手、 幅方向とも) 5個中4個以上合格
吸水膨張性(長手、 幅方向とも) % 0.0±1.0
加熱収縮率(長手、 幅方向とも) % 0.0±3.0
耐アルカリ性 (23℃) 飽和水酸化カルシウム
水溶液に15日間浸して異常のないこと
耐塩水性 (23℃) 3%食塩水溶液に15日間浸して異常のないこと

*1:参考値

3)シート系床版防水層 (流し貼り型) の特徴

表-3 シート系床版防水層(流し貼り型)の特徴

項  目 流し貼り型
概要 組成 基材であるポリエステル不織布や織布、ガラス繊維等に改質アスファルトを塗覆させた積層構造の防水シート
防水層の厚さ 1.0〜3.5㎜
施工方法 施工方法 貼付用アスファルトで貼り付ける
防水層の性能 床版や舗装との接着性 良好
防水性 非常に良好
ひび割れ追従性 非常に良好
ブリスタリング発生の可能性 比較的高い
舗装時の防水層損傷の可能性 少ない
防水層の
施工性
作業員(人/班) および機械構成 5〜7人/班 アスファルト溶融釜
ブロア
舗設時日当たり施工規模 300〜500㎡程度
養生時間 なし
条件に対する適用性*1 舗装全層打換え時の床版の不陸 凹凸が20㎜以上の場合は不陸調整が必要
舗装全層打換え時に残留アスファルトが除去しきれない場合 残留アスファルト混合物の下地への付着が良好な場合は適用可能、プライマーに含 まれる有機溶剤に注意
打継ぎ目の多い床版 適用性が高い
舗装厚が薄い場合(4〜5cm) 防水層が厚いものは影響がある
歩道部への適用 舗装厚により要検討
積雪寒冷地における適用 普通

*1:主に補修工事を対象とする場合に考慮する項目

4)副資材

表-4 シート系床版防水層(流し貼り型)の副資材

種  類 用  途
プライマー 溶剂型
水性型
反応硬化型
下地処理用プライマー
端末処理材 網状ルーフィング 防水シート端末処理材
貼付用アスファルト 改質アスファルト
アスファルトコンパウンド
貼付用アスファルト

工 法

1シート系床版防水層(流し貼り型)の構成

 防水層の構成および端末処理の例を図-2に示す。

図-2 シート系床版防水層 (流し貼り型)の層構成および端末処理の例

2シート系床版防水層(流し貼り型)の施エフロー
1) 新設
床版面の調整

留意点

コンクリート床版

  • 床版仕上げは、金ゴテ、木ゴテ、ホウキ目仕上げとする。
  • レベル鉄筋が床版より突起している場合は、ディスクサンダ等で削る。

鋼床版

  • 錆の発生程度、表面処理方法選択の目安の詳細は、道路橋床版防水便覧を参考とする。
塗布
  • ブロア、吸引機等で塵埃等を清掃する
  • プライマーをローラー刷毛や塗布機で均一に塗布する
  • 乾燥養生を行う

留意点

  • 表面乾燥状態を目視により確認する。
    (高周波水分計で含水率10%以下を目安とするが参考程度に用いる)
  • 可燃性危険物のプライマーを使用する場合は、現場での貯蔵場所および量に注意し施工中は火気厳禁とする。
  • 施工時の気温は5°C以上を原則とする。
  • 降雨中に作業してはならない。
  • 強風時の施工は材料が飛散する事があるので避ける。
  • プライマーの乾燥を指触等で確認する
貼付用アスファルトの溶解
  • 溶解温度は、材料メーカの仕様による

留意点

  • アスファルト専用の溶解釜を使用する。
  • 消火器を準備する。
  • 溶解釜の周りは汚さないように養生シートを敷く。
  • 部分加熱をさける。
シートの貼り付け
  • 縦横断勾配の低い方から施工する
  • シートを施工線に一度合わせてから巻き戻し、貼付用アスファルトを流しながら貼り付ける
  • 重ね幅は100mm 程度とする
  • シート端部からはみ出したアスファルトは刷毛で均一にならす

留意点

  • 流し貼り施工の際、 空気を巻き込まないように注意する。
  • 重ね幅は80〜150㎜とする。
端末の処理
  • 地覆部および排水ますの周りは端末処理材を用いて基層厚程度に立ち上げる。

留意点

  • 排水ます及び排水口の部分は塵埃・水分量の多い場合があるので清掃・乾燥作業を入念に行う。
防水工完了

留意点

  • 防水層のブリスタリングがないことを確認する。(発生した場合は、千枚通し等で穴を開けて押さえ込んだ後、必要に応じて貼付用アスファルトでシールする)
舗装工

留意点

  • 基本的にはタックコートは使用しない。
  • 防水層完了後、直ちに舗装が可能である。
  • 舗装のブリスタリング防止のため、 防水層施工後1週間以内の舗装が望ましい。

図-3 シート系床版防水層(流し貼り型)の施工フロー(新設)

2)舗装全層打換え
床版面の調整

留意点

  • 切削機の水の散布量は最小限に抑える。
  • 切削機の走行を止めた場合(伸縮継手付近等)はすぐに水を止める。
  • コンクリート床版の場合、床版の凹凸が20㎜以上あると補修作業が必要になることから、既存舗装材の切削時に注意し作業を進めることが望ましい。
  • 清掃は丁寧に行い、砕石等が残らないようにする。
  • 散水は最小限にする。
スイーパー清掃
アスファルト層の除去

留意点

  • 浮いた残存アスファルト層は、たたき試験等を行い、床版との接着状態を確認する。

注)貼付用アスファルトの使用量は、床版の凹凸によって変化するため、新設に比べて使用量は多くなる。

以下は、新設に準じる。

図-4 シート系床版防水層(流し貼り型)の施工フロー(舗装全層打換え)

3シート系床版防水層(流し貼り型)の施工手順

下地の調整・清掃

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コンクリート床版下地の清掃

プライマー塗布

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プライマーの塗布

アスファルトの溶解
及びシートの貼り付け

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貼付用アスファルトの溶解

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貼付用アスファルトによる
シートの貼り付け

端末の処理

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シート端末部の処理
(端末処理材による)

防水工完了

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アスファルト舗装

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防水層の完成